唐の賢帝李世民が残した『貞観政要』からリーダに求められる素養を学ぶ教養度の高い一冊。一言でいえば謙虚さの必要性と理解しました。
リーダに求められる素養を『貞観政要」を引用しながら学べる、極めて教養度の高い新書。リーダ論は、どういう方向に向かうのか、それに対して自分は何ができるか、また、どう距離を取るか、といった側面側面で、部下論として考える素材でもあるため、読者は経営層に限定されないと思います。序盤に中国古代史の概観があり、学生時代に中国史を好んでいた自分にとってそこから引き込まれました。
裸の王様にならないための諫言
耳に痛いこと[against(反する要素)]を話してくれる相手こそ大事であるとする。どんなに能力の高いリーダでも、すべてが自分の都合の良いことばかりではないですよね。人の数だけなおさら千差万別な観点がありうる。むしろ[for(賛同)]な意見ばかりでは嘘ではないか、と思うくらいが、丁度良いのだと思います。自分の意思がある程度通じる場であればこそ、こうした姿勢は難しいことだと思いますしそれだけ貴重なスキルなのでしょう。
機能としての役職
肩書きだけで「偉い」とか「上下」といった観点で、極端に言えば人の尊卑に及ぶような扱いをみる事がありませんか。私はこれが好きではないです。これが人との関係のあり方を必要以上に固定化して、その結果、組織を硬らせる要因だと思います。人としては、どんな仕事をしていようと、どんな役割を請け負っているかに関わらず、全員が尊ばれなければならないです。と思いを新たにしました。
時間軸
案件の判断に対する時間軸が説かれていました。一番に想起したのは、利益をどのような時間軸で捉えてゆくかということでした。ロスとベネフィットをどこで判断してゆくか。将来的なベネフィットを目の前のロスで失っていないか。こんな事がどれほど多いかと。そしてその逆もあり得る。正解がない中でも、どう考えるかという軸として忘れないようにしておきたいと思います。
五胡十六国、拓跋部なんて用語が出てきて学生時代を思い出して懐かしくなります。フランク族と匈奴(ほか、鮮卑・羯・氐・羌)は元は同じだったというから驚きました。