社会を構成する四つの秩序
① 科学技術・経済 < ② 法/政治 < ③ 道徳 < ④ 倫理(愛)
を軸に[正解主義]のゆき過ぎを抑制するための倫理観の必要性を説く本です。
2008年前後の本でフランスでは当時から道徳ブームだったらしいですが(今は日本でも山口周さんなど近しいですが)買い占め、転売なんていう人の浅ましさが目立つ昨今、日本ではこれからのテーマだろうと思います。
可能なことは必ずなされる / 技術の支配
技術は常に不可能を可能にするという動力が本質であり、技術自体にそれが”良いか””悪いか”は判断不可能という観点。”便利”と”良い”(あるいは”善”)は同義か。その結果MS、iPhoneなどの例からも、技術は常に社会のあり方を規定する、いわば支配するといって良いかもと感じました。自分で選んだように見えても実はそこに抗えなくなっていることの怖さってあります。
自由の象徴である民主主義に求められる制限
民主的な手続きを踏めば必ずしも良いのかという問い。ナチスの例をとり民主主義の限界を教えています。憲法や多数決の意味を考えさせられます。
個と集団で比較した秩序の優越と優位
個々人の間では徳的なやり取り(ルールや数値的プラマイ価値に比較して情感的なもの)が優越するけれど、集団の大きさに従って下位の秩序(経済的な正しさなど)が優位となるという点。組織で高い秩序を獲得するためには構成員の教養度が不可欠なのだろうと思います。
つい[正しさ]が先立ってしまうことへの反省。
相手からの質問、ツッコミに正当性だけで押してしまうようなケース、或いは製品仕様であることの正当性を声高に主張してしまうような場合。それは正しいだろうけれどもその仕様に果たして人間的な視点が考慮されていたか、という問いはあるかなぁと思います。
日々の仕事には論理の場面と、それが良いか悪いかという人的な倫理、徳的な判断が必要な場面が織り交ざっています。それを区別し対応できることがスキルの高さなのだろうけれども…欧米の大学では何しろ倫理哲学などのリベラルアーツが必修だというけれどもわかる気がしました。細部の前に基本的な倫理観がなくてはならないという教えなのだと思います。
教養、徳性がなければ技術や法もビジネスも暴走してしまうのでしょう。