お盆休みの一冊に
久しぶりに読み返したが海や帰省の描写が多く、お盆休みの一冊にぴったり。
生まれたところは空気の色が違います。土地の匂いも格別です、父や母の記憶も濃(こま)やかに漂っています。一年のうちで、七、八のふた月をその中に包(くる)まれて、穴に入った蛇のように凝(じ)っとしているのは私にとって何より温かい良い心持だったのです。
『こころ』本文より
自分は東京生まれだからそういう気持ちがあまりわからず、ずっと羨ましく感じていた。(いまではそうでもないけど)
人間の弱さと赦し
人は状況次第で否応なく悪人になりうる。汚さ、ズルさ、それらがあって人間なんだと知る。表面の綺麗さ、いい人さ、完璧さみたいなものが嘘っぽく見かけなものだと映るのは、そのためだと感じた。そして、簡単に人の弱さを追窮できなくなる。不完全さ、弱さの集合体こそが人間だと思える。
なつかしき房総の地
保田、鯛の浦など縁のある房総の幾つかの地が出てくるのも良かった。小さい頃に家族で出掛けた保田の海岸は今でもそこに残っている。
知っている場所が小説に登場すると嬉しいものなのだ。
旅にお気に入りの一冊を。
-tabi-izum 旅する文庫-[:]