【時間術思考から脱却しよう】イタリアに見る食のスローライフ

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時間短縮に明け暮れる世の中

とにかく時間短縮に明け暮れていますね、世の中が。仕事の中では仕方ないことかもしれない、それはサッカーと同じく決められた制限時間がありその中で最大の結果を出すことが目的なのだから。

無反省に時間的効率ばかり..

しかし、何度も書いてきているようにその価値が絶対化されていないかと。自分の私生活にまでその基準が無反省に一度も省みられることなく横たわっていないかという疑問です。その問いをここ数年、ずっと考えています。週末に山や田舎へ出かけてゆくことや、その土地どちの素材を使った食事と出会うことで本当に新しい世界が開けたように感じています。

習慣を省みれない想像力不足

どうして時間的な効率性が私生活まで及んでくることが省みられないのでしょうか。それは、想像力が不足しているからかな。習慣化された行動様式を省みるという発想自体がないのかもしれません。こう書いている自分自身もそうです。これは自分に対する文章です。

「待つ」ことのできない世界

そこで大きく際立つのが「待つ」ことが出来なくなっているのではないかという問いだ。時間に対する処理速度基準が高まる中で、そこからの遅れは悪として捉えられてしまうようです。しかし、サッカーでは求められる処理速度と生活の中でのそれは異なるのだと知ることだと思います。

もっと言えば、僕たちは待てなくなっています。待つことをしたくない、というのではなく、待つことが[できない]。それは速度制御をが出来ない新幹線のような。必要に応じて速度の制御ができるということ、待つということの意義を理解し実行できることがより求められるんじゃないかなと考えています。

『スローフードな人生!』を読む

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そういった考えの中で読んだ島村さんの『スローフードな人生!』(新潮社)。食を通しての生活速度制御論。想像以上に楽しい内容でした。社会学的な論述ではなく、イタリアの現地、シチリアから南チロルまで南北イタリア各地、特に都市ではなく田舎の村への取材を元に実地的な面から語られるので、リアリティがあって、かつ人々の描写がうまく、躍動感のある文章が楽しめました。

特に現地のワインやチーズの生産に関わる人たちの考え方。工業化されたワインを日々飲んでいる自分にとって、その内容に開眼させられます。著者の訪れた各地の食への取材から、工業化されしらずの間に処理速度重視に陥って幸せが見いだせていない都市生活の見直しを考えさせられる一冊でした。

地方創生/週末移住

自分にとって一番響いたのは、イタリアでも都市から田舎へという日本でのIターンなど地方創生に関する動きと類似していた動きがあった点です。自分も週末にはどこかへ(特に新潟へ)出かける中でそうした考えを持つようになったけれど。そして、その土地どちの素材、食を地元の人たちが大切にしている点ですね。新潟で言えば、魚、お米、お酒、野菜(舞茸、枝豆)などの美味しさに開眼しました。そうすると、東京ではなんでも手に入っている気になっていても、殆ど手に入っていないように思えてきます。。

手間と時間をかけることの意義

もう一つは、時間と手間をかけるという点。なんでもかんでもな速度重視に陥っている自分の生活価値観を見直しています。これは数年考えていますが。本書でみたワインやチーズ、牛やヤギを育ててゆく「時間の必要性」。そこでは、時間は短縮するものではなく[かけるもの]だという点です。どこを短縮しどこに時間をかけるか、時間を短縮し得られた時間すら、さらに短縮し続けていないか。待てなくなっていないか。制御できていないのではないか。そういう問いを新たにしています。

ワイン・チーズ好きにはさらに響く


素人ながら田舎に土地とヤギや牛を買い、薬物依存などの犯罪歴のある若者の更生施設とした牧師さんの話や、5千年前のミイラの胃袋から、当時の食事を再現するという南チロルのおじさんの話、クロアチアのワインは意外に美味しいなど、特にワイン、チーズを好む方には食事の楽しみを増大させる内容で二重に響きます。この本は、ちょっと、素晴らしい。

また、バローロといえばイタリア最強のワイン。その作り手が、当時生産性重視だった中でブルゴーニュに学んだくだりも、非常に興味深かったです。なぜならイタリアのワインはなんとなくGoing My Wayな勝手な偏見があったので。作るにあたってまさかブルゴーニュに学ぶような国柄、ワイン柄には思えなかったので。。。

ブルゴーニュのピノとバローロのネッビオーロは同じではないにせよ、単一種だからという理由もあって、その先人に学ぶ姿勢…これはイタリアらしくなくて面白かったですね。しかしそうして今のバローロがあるようなのでありました。ピエモンテ州、、やたら興味湧いてきました!

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