マーク・トウェインの人間論
アメリカの作家トウェインのニヒリズム的作品。『トムソーヤの冒険』で有名だけどより『人間とは何か』が好きでした。アドラーの『嫌われる勇気』は『人間とは何か』が構成のモチーフになっていますよね。
概ねの内容
本作は“サタン”と名付けられた天使により語られる”神”視点の人間論です。人の限定性、それを知らずに行為することの愚かさ、無力さへの無知、良心・正義とは、文明とは何かを斜め視点から問いかけてきます。普段当たり前に感じている『人=動物界最高の存在』観を一蹴するオルタナティヴな作品でした。
印象ポイント
- 虐めてきた仲間が残り12日の命と聞いたとたんに焦る姿。一生という時間すら限られているということを知らないことを露呈してしまう点。
- お金がもらえ、生活が維持できる、となると態度が一変する人間的な心のあり方。
- 周りがそうだと見えると、自分の心と反して周囲と同じく行動してしまうあり方。
- 文明とは殺戮の歴史であるとする点。そしてヒト以外の動物は食べる以外に殺すことはない故に、獣の方がヒトよりも遥かに優れた存在であるとする点。
獣以下の無知で愚かな存在として
人間が、自分たちの世界でしか生きられない限定的な存在と知らずに、栄誉、貧富、優劣などを小さな世界で競っている姿を、斜めからみる視点です。
まぁ考え方的には格好が良いものの、、そうした視点が果たして自分の喜びや幸せにつながるのかなと思ってしまいます。すべてを知らないことや、例え小さく弱く限定的であってもそれは評価であって本質ではないかと。自分の世界の中で目一杯生きることや、限定的でも本人が小さな幸せを感じることこそが生きるということと見えます僕には。
神様からすれば所詮は数十年でこの世から消える存在、指さきひとひねりで消滅する限られた存在でも、自分にはこの生が絶対的なんだよ、と魔界塔士SAGA的な心情になった次第です。
ヒトに必要なものは〇〇
そんななかでサタンが最後に口にした言葉、”人に必要なものは「笑い」だ。費用も特別な仕掛けもいらないのにヒトは笑うこともできない”といった問いかけ には心を打たれました。
物語は面白いし中高生の時に読んでいたらアナーキーになっていたとおもうけど、今ではそうした存在こそ人間なのだと知るようです。